人工呼吸器を付けた父が、話しを始めました。2018/8.31

2018年 8月31日

人工呼吸器を装置した状態を皆さんは想像できるでしょうか?

ご家族の方でそのような経験がある方はご存知だと思います。

人工呼吸器を装着した場合は、基本的には声を出して

話をする事はできません。意識のある方にとっては

どれだけ苦痛であり悲しいものか計り知れません。

85歳の父が、その状態にあります。

治療のため人工呼吸器を装着することになり、

現在担当医の先生が離脱に向けて、

一生懸命に治療に当たってくださっています。

私たち家族はそれを見守る状態です。

父が人工呼吸器を喉に装着した当日の話をお伝えしたいと思います。

その日、父は数時間後麻酔から目が覚めました。

勿論、術後は声が出ないということは伝えていましたが

私達家族は父の姿を目にして「涙」が出てきました。

無事、手術が成功したにもかかわらず、

うれし涙が出るはずが、なぜかとても辛い悲しい涙でした。

これからは意識がある父と会話ができない・・

そう思う辛い悲しい気持ちと、

入院前は意識のはっきりしていた父が、

話をしたくても話ができないという状態になった・・

という父本人の気持ちの整理、どのように受け入れていくのか・・

その事が心配でもあり不安でした。

しかし、その不安とは裏腹に

父は術後も意識がはっきり戻り、傷の痛みに耐えながらも

顔の表情は落ち着いているように思えました。

「お父さん・・、痛い?」と私

「うんん~」と顔を横に振り痛くないと教えてくれました。

「お父さん、無事手術は成功したよ。口は動かせるから

動かしてもいいからね」と私

「うん」と父が顔を縦に少しだけ動かしました。

それが深夜12時の出来事です。

私は隣でずっと父の様子を見ていました。

なぜが、父は天井の1点を見つめずっと目を開けていました。

「お父さん、今日は手術したばかりだから少し寝たほうがいいよ。

眠くないの?」と聞くと

「うん」と父が頭を縦に振りましたが、

喉の傷からは大量の出血があり看護師さんを呼んで

ガーゼ交換をしていただきました。

深夜3時・・まだ目が開いているようでした。

病室は電気も消されて部屋は静まり返っていましたが、

小灯台の小さな明かりのみで父の顔を見る事ができました。

「お父さん、何か話がしたいのなら口を開けて話をしてみて。

私がゆっくり口の動きを見て話しを聴くからね」と気持ちを伝えました。

すると、父が少しずつ口を動かし話を始めました。

と同時に、

父が、私に何を伝えようとしているのか、何を言っているのか、

全くかわからない・・。

父が一生懸命に私に顔を向けて話している内容は何なのか・・・・。

私の心の中で、辛さと、悲しさと、と同時にもどかしさが出てきました。

そこで私はわからなくても一生懸命口を見て動きを観察すれば

少しはわかるのではないかと・・

そして一生懸命に口の動きを観察し話を聴きました。

そして、

「うん。うん。わかるよ。お父さんの言っている事わかるよ。

そうなんやね。うん。わかった・・」と伝えました。

すると父は笑って「うん」と顔を縦に振ってくれました。

父は私が話す内容を理解してくれたと思ったに違いありません。

しかし、

私は…何を言っているのか全く分かりませんでした。

声の出ない状態で、口の動きのみで

言葉を読み取ることは私には不可能でした。

心の中で涙がでました。

しかし、

父に「何を言っているかわからない」と伝える事は、

今の父を苦しめてしまうと考えると、

それだけは絶対に言えませんでした。

私がうなずく事で「わかってくれているんだ」と

感じた父がどんどん話を始めた事に

私も驚きを隠せませんでした。

と同時に嬉しい気持ちがこみ上げてきました。

そして無意識に「うん、うん、!!」と長い間

うなずいている自分に気づきました。

1時間程度父は話し続けたのです。勿論、

時々、沈黙の時間もありますが、父は一生懸命

何かを私に伝えてくれました。

私は自分のできる範囲、誠心誠意傾聴に集中をしました。

人生でこれだけ周りの音や環境耳にすべてシャットアウトし

傾聴しながらうなずくことはなかったように思います。

しかし、この相槌が父が安心して話ができる気持ちに

繋がったのだと感じました。

聴いた内容を言い返す私からの言葉は全く出ませんでしたが、

少しでも父が気持ちよく話ができたのなら

私にとってはとても嬉しい事でした。

そして、その父の姿を見る事で心が温かくなりました。

勿論、これから離脱に向けての治療が始まるわけですが

これもどうなるかはわかりません。家族としては

離脱できる事を願うばかりです。

今後は文字盤を使ったりと色々な方法がありますので

コミュニケーションを取っていきます。

今回、傾聴、来談者中心療法の力を実感しました。

お父さんありがとう。

福岡県北九州市門司区

悩み相談/カウンセリングオフィス/

https://www.hitoikiclub.com/

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